公益法人の事業報告に何を書くか。記載事項は法令で二つに決まっている

公益法人の実務

事業報告は自由記述だと思われがちだ。何を書けばいいのか決まっていない、去年のものを直して出している——よく聞く。

決まっている。法令が二つだけ挙げている。そして令和6年の改正で、この書類の性格が変わった。

記載事項は、二つだけ

認定法第21条第4項が内閣府令に委ね、公益法人認定規則第53条が受けている。条文はこれだけだ。

法第二十一条第四項の内閣府令で定める事項は、次に掲げる事項とする。
一 各事業年度における公益目的事業の実施状況
二 当該公益法人の運営体制の充実を図るための取組(一般社団・財団法人法施行規則第三十四条第二項第二号に掲げるものを含む。)

一つ目は従来から書いてきたものだ。手が止まるのは二つ目である。

「運営体制の充実を図るための取組」に何を書くか

内閣府はFAQで一つの例を挙げている。外部理事・外部監事の選任の方針と、選任した人が機能を発揮できるようにするための情報提供その他の支援だ。

外部理事を置いた年は、そこに書くことがある。置けなかった年も、書くことがある。候補者をどう探しているか、定款をいつ変えるか。書かないという選択も、読まれる。

括弧書きが指しているもの

第53条第2号には括弧書きがある。見落とされやすいが、ここが「ガバナンスについて何を書くのか」の答えになる。

一般社団・財団法人法施行規則第34条第2項第2号は、こう定めている。

法第七十六条第三項第三号及び第九十条第四項第五号に規定する体制の整備についての決定又は決議があるときは、その決定又は決議の内容の概要及び当該体制の運用状況の概要

第90条第4項第5号が指しているのは「理事の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他……業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備」——いわゆる内部統制システムだ。

重要なのは条文の書き出しだ。「決定又は決議があるときは」と書いてある。決議していなければ、書く対象がない。

決議が義務なのは、負債200億円以上の法人だけ

第90条第5項は、大規模一般社団法人である理事会設置法人は、この体制の整備を決定しなければならないとしている。

「大規模一般社団法人」の定義は第2条第2号にある。最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が200億円以上の法人だ。

学会・協会で該当する法人は、まずない。つまり内部統制の決議をしていなければ、この部分は書かなくてよい。「ガバナンスの記載が要るらしい」と身構える必要はない。

逆に、決議しているなら決議の内容の概要と、運用状況の概要の二つを書く。決議文を貼るだけでは足りない。その年どう運用したかが要る。

提出したものは、そのまま公表される

ここが令和6年改正で変わった。認定法第22条第2項。

行政庁は、内閣府令で定めるところにより、……公益法人から提出を受けた財産目録等……を公表するものとする

改正前は閲覧または謄写の求めに応じる形だった。見たい人が行政庁に言えば見せる。いまは違う。誰も求めなくても、出る。

除かれるものが一つある。同項の括弧書きで、役員等名簿と社員名簿については個人の住所に係る記載の部分を除く。役員の氏名は出る。住所は出ない。法人の事務所で閲覧に応じるときも、第21条第6項で社員・評議員以外の人には住所を除いて見せてよいとされている。

読む相手は、行政庁ではない

出す相手は行政庁だ。だが読む相手は違う。

会員。寄付をした人。助成を考えている財団。次の理事を探している側。そして、入会を迷っている人。

事業報告は、法人の一年を外から見る唯一の公開書類だ。「提出した」で終わる書類ではなくなった。

いつまでに作るか

提出は毎事業年度の経過後三月以内(認定法第22条第1項)。三月決算なら6月30日だ。

だが完成期限はそこではない。事業報告は監事の監査を受け(一般法人法第124条第1項)、理事会の承認を受け(同条第3項)、招集通知に際して社員に提供される(第125条)。定時社員総会の二週間前には完成している必要がある。

なお事業報告は、計算書類と違って総会の承認は要らない。第126条第3項で、理事が内容を報告すれば足りる。承認が要るのは計算書類だけだ。

事務局が、提出の前にやること

  1. 「運営体制の充実を図るための取組」の欄が空欄のまま出ていないかを確かめる
  2. 内部統制の決議をしているか確認する。していなければ、その部分は書かなくてよい
  3. 会員の顔を思い浮かべて、通して読む。「この一年、何をした法人か」が伝わるか
  4. 伝わらないなら、行政庁向けの言葉で書かれている

提出の前に、会員として一度読む。それだけで書き方が変わる。

まとめ

  • 記載事項は法令で二つ。公益目的事業の実施状況と、運営体制の充実を図るための取組
  • 二つ目には外部理事・外部監事の選任方針と支援の取組が入る
  • 括弧書きが指す内部統制の記載は、決議していなければ不要。決議が義務なのは負債200億円以上の法人だけ
  • 提出したものは、誰が求めなくても公表される。住所だけは除かれる
  • 読む相手は行政庁ではなく、会員とまだ会員でない人
  • 完成期限は提出日ではなく、定時社員総会の二週間前

出典

公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律 第21条第4項・第6項、第22条第1項・第2項/同法施行規則(公益法人認定規則)第53条/一般社団法人及び一般財団法人に関する法律 第2条第2号、第76条第3項第3号、第90条第4項第5号・第5項、第124条第1項・第3項、第125条、第126条第3項/同法施行規則第34条第2項第2号。いずれもe-Gov法令検索にて2026年10月7日に確認。内閣府 公益法人Information「公益法人制度についてのよくある質問(FAQ)」問Ⅱ-2-㉛(2026年10月7日確認)。

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