外部理事を置くには定款変更が先。期限と候補者の要件を片づける

記事「外部理事を置くまでの手順。定款・期限・候補者を順番に片づける」の見出し画像。要件は二階建て、期限は三つある、と記されている。 公益法人の実務

2025年4月から、公益社団法人と公益財団法人に外部理事と外部監事を置くことが義務になった。多くの学会・協会で、まず始まるのが候補者探しだ。

だが候補者を探す前に、確かめることが三つある。条文が誰を求めているのか。自分の法人の「社員」が誰なのか。そして、期限がいつなのか。

この三つを飛ばして候補者から入ると、見つかった人が要件を満たしていなかった、定款が変えられていなかった、という順序の事故が起きる。

条文は、二階建てになっている

「外部理事」という言葉は、実は法律の条文に出てこない。認定法第5条第15号が定める要件を満たす理事を、通称でそう呼んでいるだけだ。

そして要件は、法律本体と内閣府令の二階建てになっている。ここを分けて読まないと、条文を見ても要件の全体が見えない。

一階:認定法第5条第15号

理事のうち一人以上が、次を満たすこと。

  • 当該法人またはその子法人の業務執行理事または使用人でないこと
  • 就任の前10年間、当該法人またはその子法人の業務執行理事または使用人であったことがないこと
  • その他これに準ずるものとして内閣府令で定める者であること

この号には、ただし書きがある。毎事業年度における収益の額、費用及び損失の額その他政令で定める勘定の額がいずれも政令で定める基準に達しない場合は適用しない。これが小規模法人の除外だ。「いずれも」なので、収益と費用の両方が基準未満でなければ除外されない。

二階:施行規則第4条

「内閣府令で定める者」の中身が、ここにある。次に掲げる者でない者、と定められている。

  1. 当該法人が一般社団法人である場合は、その社員
  2. 当該法人が一般財団法人である場合は、その設立者
  3. 1に掲げる者が法人である場合は、その役員及び使用人
  4. 2に掲げる者が法人である場合は、当該法人及びその子法人の役員及び使用人

学会でよく問題になる「社員でないこと」は、法律本体ではなくこの府令から来ている。条文だけを読んで「社員要件は書いていない」と判断すると、取り違える。

監事は、条文が別

外部監事は第16号と施行規則第5条だ。府令の中身は第4条と同じだが、法律側の要件が違う。

第16号は「就任の前10年間、当該法人またはその子法人の理事または使用人であったことがない者」と書く。第15号の「業務執行理事または使用人」より範囲が広い。業務執行理事でない平の理事であっても、過去10年に理事だった人は外部監事になれない。会計に明るい元理事を監事に充てる慣行がある法人は、ここで詰まる。

そして第16号には、ただし書きがない。小規模法人の除外は外部理事だけの話で、外部監事は収益がいくらであっても必要になる。

「社員」が誰かは、定款で決まる

府令が「社員でないこと」を求める以上、次に見るのは自分の法人の社員が誰かだ。

公益社団法人の社員は、会員のことだと思われがちだが、そうとは限らない。定款による。

会員全員が社員の学会もあれば、代議員制を採っている学会もある。代議員制では、会員の中から選ばれた代議員だけが社員だ。正会員であっても、代議員でなければ社員ではない。

つまり代議員制の学会では、「会員でない人」を探す必要はない。代議員でない会員であれば、社員要件は満たせる。候補者の幅は、思っているより広い。学会の内情を知っている人から選べる可能性がある。

定款の一行が、道を塞ぐ

候補者の幅が広がっても、まだ終わらない。理事をどこから選ぶかを定めた条項を読む必要がある。

学会の定款には、こう書いてあるものが多い。

理事は、社員の中から選任する。

この一行があると、理事は全員が社員になる。社員でない人は理事になれない。外部理事は社員であってはならない。だからこの条文がある限り、外部理事は一人も置けない。

社員の範囲がどれだけ狭くても関係ない。理事の選任母体が社員に限定されている以上、外に開く道がない。定款変更が先になる。

一方、監事の条項は最初から外に開いていることがある。「監事は、社員または会計に精通する者の中から選任する」と書いてあれば、社員でない会計の専門家を選ぶ道はすでにある。理事より監事から先に片付けると、進む。

外部理事・外部監事は登記されるのか

されない。

一般社団法人の登記事項を定めるのは一般法人法第301条だ。そこに「外部」という語は一度も出てこない。登記されるのは理事の氏名、代表理事の氏名及び住所、監事設置一般社団法人である旨及び監事の氏名——どの理事が外部理事なのかは、登記されない。

そもそも「外部理事」は法律上の用語ではない。認定法の条文に「外部理事」という語は一度も出てこない。第5条第15号の要件を満たす理事を、通称でそう呼んでいるだけだ。

だから登記簿を見ても、その法人が外部理事を置いているかは分からない。確かめる先は登記ではなく、役員名簿と定款だ。

期限は、三つある

施行日の2025年4月1日が期限だと思っている法人がある。違う。期限は法人ごとに異なり、しかも一つではない。

令和6年改正法の附則第5条は、三つの項に分かれている。それぞれ対象の号が違い、起算する任期も違う。

附則第5条対象適用開始
第1項第12号(各理事が各監事と特別利害関係を有しないこと)全ての理事及び監事の任期が満了する日の翌日
第2項第15号(外部理事)全ての理事の任期が満了する日の翌日
第3項第16号(外部監事)全ての監事の任期が満了する日の翌日

外部理事と外部監事の話に気を取られて、第1項の存在を見落としやすい。第12号は理事と監事の特別利害関係に関する基準で、外部性とは別の論点だ。そして起算が「理事及び監事」の両方なので、三つの中でいちばん遅くなることが多い。

第12号の「特別利害関係」とは

第12号は「各理事について、監事(監事が二人以上ある場合にあっては、各監事)と特別利害関係を有しないものであること」と定める。理事の誰か一人と、監事の誰か一人の間に特別利害関係があれば、基準を満たさない。

「特別利害関係」の定義は、第10号の括弧書きにある。第12号にも同じ定義が及ぶ。

一方の者が他方の者の配偶者又は三親等以内の親族である関係その他特別な利害関係として政令で定めるものをいう

つまり配偶者と三親等以内の親族は条文に直接書いてあり、残りは政令に飛ぶ。施行令第4条が、次の関係を挙げている。

  1. 婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者
  2. その人の使用人
  3. 1・2以外で、その人から受ける金銭その他の財産によって生計を維持している者
  4. 2・3に掲げる者の配偶者
  5. 1から3までに掲げる者の三親等内の親族であって、これらの者と生計を一にする者

学会で引っかかりやすいのは、親族よりも2番目の「使用人」だ。理事が代表を務める法人や事務所の職員を監事に立てている場合、特別利害関係にあたる。長年の信頼で頼んできた関係ほど、気づきにくい。

3番目も見落としやすい。雇用関係がなくても、その理事からの支払いで生計を立てているなら該当する。顧問料や業務委託料で実質的に生計を維持しているケースが入りうる。

役員名簿を作るときに、任期満了日とあわせて理事と監事の間の関係も棚卸ししておくと、あとで戻らずに済む。

「全ての」は、いちばん遅い一人のこと

任期がそろっている法人なら、次の改選が期限になる。そろっていない法人もある。補欠で入った理事、途中で交代した理事。任期がずれる。

「全ての理事の任期が満了する日」とは、最も遅い一人の満了日だ。一人でも任期の長い理事がいれば、期限はその人まで延びる。

では、その人が抜ければ期限は早まるのか。内閣府は問Ⅱ-2-㉘で、任期満了日が最も遅い理事が途中で退任し、定款の規定により補欠が残りの任期を引き継ぐ場合、期限は前任者の満了日のままだとしている。人が入れ替わっても動かない。

早く置くと、経過措置はそこで終わる

三つの項すべてに、同じ括弧書きがある。

その日前に当該公益法人が同号の基準に適合した場合にあっては、その適合した日

任期満了を待たずに外部理事を置けば、その日から基準の適用が始まる。先に入れて、あとで外すことはできない。置いた瞬間に、維持する義務が始まる。

急いで一人迎え、次の改選でその人が続けられない——それが最もまずい。候補者の継続可能性を確かめてから置くこと。

逆算して、一枚の表にする

ここまでを、手元の書類だけで片付ける。必要なのは定款、役員名簿、直近の決算書の三つだ。

  1. 定款の「社員」の定義を読む。会員全員か、代議員か
  2. 定款の「理事の選任」を読む。社員に限定しているか。していれば定款変更が要る
  3. 定款の「監事の選任」を読む。外に開いていれば、監事は定款変更なしで進む
  4. 役員名簿で、理事全員・監事全員の任期満了日を書き出す。いちばん遅い日の翌日が、それぞれの期限
  5. 同じ名簿で、理事と監事の間に、配偶者・三親等以内の親族・使用人・生計を維持している関係がないかを確かめる。あれば第12号に触れる
  6. 直近の決算で、収益の額と費用及び損失の額を見る。両方が基準未満なら外部理事は不要。片方でも超えていれば必要。監事は金額に関係なく必要

5つ目で「不要」になる学会は多くない。会費と学術集会の収入だけで、基準は容易に超える。

総会の段取り

定款変更には社員総会の特別決議が要る。定款変更と外部理事の選任を同じ定時社員総会で行うことは、内閣府が「一般的には可能」としている。総会を二度開く必要はない。

ただし順序がある。定款変更の議案を先に可決し、そのあとで選任する。そして候補者は、総会の前に決まっていなければならない。定款が決まらないと候補者の要件が確定しない、という循環に見えるが、実務では「変更後の定款を前提に候補者を立てる」ことになる。

候補者探しに半年、定款の起案と理事会での審議に三か月と見れば、着手は期限の一年前だ。

まとめ

  • 要件は法律本体と内閣府令の二階建て。「社員でないこと」は府令から来る
  • 社員が誰かは定款で決まる。代議員制なら候補者の幅は広い
  • 「理事は社員の中から選任する」の一行があれば、定款変更が先
  • 監事は定款次第で先に片付く。ただし要件は理事より広く、除外もない
  • 期限は三つ。第12号・第15号・第16号で起算する任期が違う
  • 第12号は理事と監事の関係の話。親族だけでなく「使用人」「生計を維持している者」も入る
  • 「全ての」は、いちばん遅い一人。補欠を入れても動かない
  • 早く置けば、その日から義務が始まる
  • 外部理事・外部監事であることは登記事項ではない。確かめる先は役員名簿と定款

候補者から入らない。定款、社員、期限の順に見る。この順番を間違えると、候補者が見つかったのに定款が間に合わない、ということが起きる。

出典

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律 第301条/公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律 第5条第12号・第15号・第16号、同法施行規則第4条・第5条、同法施行令第4条、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の一部を改正する法律(令和6年法律第29号)附則第5条第1項・第2項・第3項(いずれもe-Gov法令検索にて2026年10月7日に確認)。内閣府 公益法人Information「公益法人制度についてのよくある質問(FAQ)」問Ⅱ-2-③、④、⑩、⑫、⑱、⑲、㉓、㉔、㉕、㉘(2026年10月7日確認)。

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