公益法人の一年には、提出期限が二回ある。三月末と六月末を逆算する

記事「公益法人の一年には、提出期限が二回ある」の見出し画像。逆算の起点は総会ではない、と記されている。 公益法人の実務

三月決算の学会には、毎年同じ渋滞がある。六月に総会をやり、六月三十日までに行政庁へ出す。その間が数日しかない年がある。

だが六月だけを見ていると、もう一つの期限を落とす。公益法人の一年には、提出期限が二回ある。

期限は、年に二回

認定法第22条第1項が、二つの期限を同時に定めている。対象の書類が違い、期限も違う。

いつ何を根拠
事業年度開始の日の前日まで
(三月決算なら3月31日)
事業計画書、収支予算書その他内閣府令で定める書類第21条第1項・第22条第1項
事業年度経過後三月以内
(三月決算なら6月30日)
財産目録、役員等名簿、報酬等の支給の基準を記載した書類ほか第21条第2項・第22条第1項

六月の話ばかりされるので忘れられるが、年度が始まる前日にも提出がある。しかも三月決算の法人にとって、この日は決算の直前だ。三月末は、前年度の締めと翌年度の計画書提出が重なる。

備置きの期間も条文に書いてある。開始前の書類は当該事業年度の末日まで。決算後の書類は主たる事務所に五年間、従たる事務所に写しを三年間だ。

六月の逆算:起点は総会ではない

六月三十日が提出期限。では総会はいつか。一般法人法第36条第1項は「毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならない」としか書いていない。日付は定款が決める。多くの学会が「事業年度終了後三か月以内」としている。

なぜ総会を待つのか。第126条第2項が、計算書類は定時社員総会の承認を受けなければならないとしているからだ。承認前の数字は確定していない。なお事業報告のほうは第3項で報告でよい。承認が要るのは計算書類だけだ。

逆算の起点は、総会の日ではない。その前に書類が完成していなければならない日だ。

二つの「二週間前」は、理由が違う

ここが混同されやすい。二週間前という線は二本あり、立っている理由が別だ。

  • 備置き(第129条第1項)— 計算書類等を、定時社員総会の日の一週間前の日から主たる事務所に備え置く。理事会設置一般社団法人にあっては、二週間前。
    → 二週間になるのは理事会設置だから。
  • 招集通知(第39条第1項)— 原則は社員総会の日の一週間前まで。ただし第38条第1項第3号(書面による議決権行使)または第4号(電磁的方法による議決権行使)を定めた場合は、二週間前まで。
    → 二週間になるのは書面表決などを認めるから。理事会設置であること自体は関係しない。

つまり書面表決を採らない理事会設置法人でも、備置きは二週間前から必要になる。招集通知は一週間前でよくても、書類の完成期限は二週間前だ。短いほうの日付で段取りを組むと間に合わない。

そして第125条が、理事会設置法人では招集通知に際して、理事会の承認を受けた計算書類・事業報告・監査報告を社員に提供しなければならないとしている。通知を出す時点で、書類は完成している。

その前に、監査と理事会がある

二週間前から、さらに前へ引く。第124条第1項、監事設置法人では計算書類と事業報告は監事の監査を受ける。会計監査人設置法人なら第2項で、計算書類は監事と会計監査人、事業報告は監事だ。

第124条第3項、理事会設置法人では監査を受けたものを理事会が承認する。

監事の監査に二週間、理事会の招集と開催に二週間。合わせて一か月は見ておきたい。

並べると、こうなる

六月二十五日に総会を置いた場合の例だ。

時期すること
5月上旬決算の確定
5月中旬監事の監査
5月下旬理事会で承認
6月11日招集通知の発送、備置きの開始(この時点で書類は完成)
6月25日定時社員総会
6月30日行政庁へ提出

総会から提出まで、残りは五日だ。

詰まるのは、提出の側ではない

数日しかないと聞くと、提出の作業が大変に思える。違う。提出そのものは、承認済みの書類を出すだけだ。

詰まるのは五月である。決算、監査、理事会が一か月に収まらないと、六月十一日の招集通知に間に合わない。通知が遅れると総会が後ろにずれる。総会がずれると、六月三十日に当たる。

六月の渋滞は、五月に作られている。

総会のあとに、もう一つある

第128条第1項。貸借対照表は、定時社員総会の終結後遅滞なく公告しなければならない。提出で終わりではない。

ただし逃げ道がある。第128条第3項は、定時社員総会の終結の日後五年を経過する日まで、貸借対照表の内容である情報を継続して電磁的方法により不特定多数の者が提供を受けられる状態に置く措置をとれば、第1項・第2項は適用しないとしている。

つまり自法人のサイトに五年間掲げ続ければ、官報や日刊紙への公告は要らない。多くの学会がこの方法を採っている。採るなら、総会のあとに「サイトに載せる」という作業が年中行事として入る。載せ忘れると、公告をしていないことになる。

出したものは、そのまま公表される

第22条第2項が、改正で変わった。

行政庁は、内閣府令で定めるところにより、……公益法人から提出を受けた財産目録等……を公表するものとする

改正前は閲覧または謄写の求めに応じる形だった。見たい人が行政庁に言えば見せる。いまは違う。誰も言わなくても、出る。

一点だけ除かれるものがある。同項の括弧書きで、役員等名簿と社員名簿については、記載事項のうち個人の住所に係る記載の部分を除く。役員の氏名は出る。住所は出ない。

事業報告に書くべき事項は、第21条第4項が内閣府令に委ねている。各事業年度における公益目的事業の実施状況と、公益法人の運営体制その他の適正な運営を確保するために必要なものだ。行政庁に出す書類ではなく、会員と、まだ会員でない人が読む書類として書く。

一般財団法人の場合

ここまでは一般社団法人の条文で書いた。一般財団法人については、第199条が前章第四節(計算)を準用し、「社員総会」を「評議員会」と読み替える。計算の手続きの骨格は同じだ。

ただし招集通知の期間が違う。

第182条第1項は、評議員会の日の一週間前までに書面で通知を発する、と定める(定款でこれを下回る期間を定めたときはその期間)。社団の第39条第1項にあった「二週間前まで」のただし書に当たるものが、財団にはない。

理由は招集の決定を見ると分かる。社団の第38条第1項は第3号で書面による議決権行使、第4号で電磁的方法による議決権行使を定められるとしており、これを定めた場合に二週間前になる。一方、財団の第181条第1項にはこの二つに当たる号がない。評議員会には書面議決権行使の制度がないからだ。だから二週間前という線も立たない。

一方、備置きは財団も二週間前だ。第129条第1項が第199条で準用される。同項の括弧書きは「理事会設置一般社団法人にあっては、二週間」と書かれており、第199条の読み替え指示にこの部分は出てこない。文字どおり読むと財団に及ばないように見える。

だが準用の範囲を見ると、そうは読めない。第199条は第126条第1項から第1号・第2号・第4号を除いて準用している。残るのは第3号、すなわち「理事会設置一般社団法人」を対象とする号だけだ。

もし「理事会設置一般社団法人」が財団に及ばないとすると、第126条第1項は財団にとって該当する号が一つも無くなる。計算書類を評議員会に提出する根拠が消えてしまい、条文が空振りする。そうならないよう、準用にあたって財団は「理事会設置一般社団法人」として読まれている。

同じ第4節の中にある第129条第1項の括弧書きも、同じに読むのが筋だ。したがって財団の備置きも、評議員会の日の二週間前から。一般財団法人は第170条第1項で理事会が必置なので、結論としても無理がない。

つまり財団は、招集通知は一週間前、備置きは二週間前という組み合わせになる。書類の完成期限を決めるのは、長いほうの備置きだ。

いずれにせよ、自法人が社団か財団かで読む条文が変わる。定款と登記を確かめてから当たること。

事務局が、いま決めること

来年の日付を、決算が始まる前に押さえる。

  1. 総会の日(会場の確保を含む)
  2. その二週間前。招集通知の発送と備置きの開始。この日に書類が完成している
  3. 理事会の日(監事の予定を先に押さえる)
  4. 決算確定の目標日。理事会の二週間前
  5. 事業年度開始の日の前日。事業計画書と収支予算書の提出
  6. 総会後の公告。サイト掲載で代える場合は、掲載日と五年間の掲出開始

会場と監事の予定は、四月になってからでは埋まっている。

まとめ

  • 提出期限は年に二回。事業年度開始の日の前日と、経過後三月以内
  • 六月の逆算の起点は総会ではなく、その二週間前
  • 二つの「二週間前」は理由が違う。備置きは理事会設置だから、招集通知は書面表決を認めるから
  • 書面表決を採らなくても、理事会設置なら備置きは二週間前
  • 詰まるのは五月。決算・監査・理事会に一か月要る
  • 総会のあとに公告がある。サイトに五年間掲げる方法で代えられる
  • 提出したものは、誰が求めなくても公表される。住所だけは除かれる
  • 財団は招集通知が一週間前、備置きが二週間前。評議員会に書面議決権行使の制度がないので通知の二週間前は立たないが、備置きの二週間は準用の建て付け上およぶ

来年の総会の日を、いま決める。それだけで六月は静かになる。

出典

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成18年法律第48号)第36条第1項、第38条第1項、第39条第1項、第124条第1項・第2項・第3項、第125条、第126条第1項第3号・第2項・第3項、第128条第1項・第2項・第3項、第129条第1項・第2項、第170条第1項、第181条第1項、第182条第1項、第199条。公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(平成18年法律第49号)第21条第1項・第2項・第4項、第22条第1項・第2項。いずれもe-Gov法令検索にて2026年10月7日に確認。

タイトルとURLをコピーしました